海域アジア・オセアニア研究
Maritime Asian and Pacific Studies
東洋大学拠点

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【開催報告】白山人類学研究会 2025年度第7回定例研究会開催のご報告

【開催報告】白山人類学研究会 2025年度第7回定例研究会開催のご報告

2025.12.22

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2025年12月08日(月)に、本拠点との共催で白山人類学研究会2025年度第7回定例研究会をおこないました。

発表題目: 社会的なるものを考える——ウガンダ、カンパラにおけるガンダ民族の儀礼と「市民性」について

発表者: 森口 岳(東洋大学 人間科学総合研究所 客員研究員)

要旨
 本発表は、ウガンダのガンダ民族における親族構造を分析することで、それがいかにウガンダ国家における「家族的市民モデル」として政治的・社会的秩序を形づくっているかを明らかにするものである。また古典的な人類学・社会学の主題ともなる「社会的なるもの the social」の位置づけを、デュルケムの儀礼論とラトゥールのANT(アクターネットワーク理論)の間で比較・検討しつつ、民族誌的な事例を通してその内実を問うものである。
 ウガンダ国家のマジョリティ(約18%ほど)を占めるガンダ民族の社会では父系出自を基盤とした階梯的な氏族制度が存在し、エンジュ(Enju 日本語「家族世帯」の意に近い)からオルニィリリ(Olunyiriri)、オムトゥバ(Omutuba)、エッシガ(Essiga)、アカソリャ(Akasolya)へと氏族内の上位集団へ接続し、最終的にガンダ王国の頂点であるカバカ(Kabaka ガンダ王)の権威へと結び付けられる。この体系は父系性出自集団における家父長制的な価値観に強く依拠しており、儀礼や称号を通じて男性中心に再生産される。
 本発表で中心的に取り上げられる儀礼は、カンパラに住まうバントゥー系民族たちの間で行われる伝統的結婚儀礼(オクワンジュラ Okwanjulaとキリスト教式の結婚式、およびガンダ民族の親族組織によって行われる葬送儀礼(オルンベ Olumbe)である。これらの儀礼を通して、個人や「親族/家族」は、親族集団の正統性を確認し、土地・財産の継承を定め、社会的秩序を小国家的に体現する。特に葬送儀礼、かつ継承儀礼であるオルンベにおいては、父系出自の確認と系譜の朗誦が繰り返され、男性の地位承認や共有財産の分配が行われる一方、女性や婚外子、他氏族出身者は排除・制限される。オルンベは包摂と排除を分ける境界儀礼であり、ガンダの文化的正統性の再生産の核ともなっている。
 総じて本発表では、ガンダの家族・親族制度を「市民性」の枠組みから読み解き、それが王国制度や富の再分配を背景に、中心と周辺を分かつ政治秩序を支えていることを論じていく。それはつまり、ウガンダという国家において、ガンダ民族における「親族/家族」は「市民」共同体として、規範的モデルを提示しつつ、その排他性が同時に欲望と緊張を生み出し、政治の核となっていることを意味している。

例会の様子:
 森口岳先生による、アフリカウガンダにおけるガンダ民族の儀礼をもとに、どのように市民性が現れるのか、について研究発表が行われました。婚礼、葬式を含めて、「モノ」がどのように儀礼にて用いられるか、ガンダ民族の一般的な儀礼の内容が詳細に紹介され、、オーディエンスからは対面・オンラインから活発な質問と意見が寄せられ、盛況のうちに閉会しました。