調査レポート「新潟県沿岸部および内陸部における災害と復興」
2024.9.9
研究活動
本レポートは、2024年8月23日から24日にかけて、新潟県沿岸部および内陸部にて実施された現地調査等の成果を一部抜粋したものです。
新潟県沿岸部および内陸部における災害と復興
文筆:明星つきこ(日本学術振興会・東洋大学)
本調査の目的は、日本海側における海辺居住の様相と変遷、また災害に対するレジリエンスについて情報を収集することである。
初日の8月23日は、上越市において地元郷土史家と面会し、直江津の沿岸災害と地域社会の変容について聞き取り調査を実施した。2日目の8月24日には、直江津港、柏崎市沿岸部、東京電力刈羽原発周辺を見学し、沿岸部の漁業利用に加え、油田採掘や原発等のエネルギー開発における利用状況について情報収集を行った。新潟県の海岸線は本土側だけで330.2kmあり、その地形や景観も非常に変化に富んでいる。砂浜の海岸線もあれば、その周囲は常に波が打ち付ける高い崖に覆われている箇所もある。そのため高波による被害も発生しており、特に11月から3月の冬季においては北西からの風により高波が生じ、海岸線の浸食や人家、田畑の流失や、交通止め等の被害が発生しているという*1。
直江津港(2024年8月24日 撮影:明星つきこ)
また沿岸部を中心に新潟県内には多くの油田やガス田があり、令和4年度では原油は国内生産の65.4%、天然ガスは国内生産の76.7%を占め、国産エネルギー資源の重要な供給地になっている*2。沿岸部にはこれらエネルギー資源の貯蔵地や発電所も多い。例えば直江津港には、(株)INPEX直江津港LNG基地や東北電力上越火力発電所があり、また柏崎市および刈羽村には東京電力の柏崎刈羽原発もある。なお、2021年に原子力規制委員会から事実上の運転停止命令が出され、2023年12月には解除されたものの、地元からの同意をめぐり2024年8月末現在においても未だ再稼働の見通しは立っていない*3。
上越市、柏崎市における沿岸部の暮らしや沿岸地域の利用状況を見学した後に新潟市に移動した。市内中心部でもある新潟港エリアに位置する新潟市歴史博物館みなとぴあにて北前船関連の展示『開館20周年記念企画展:北前船と新潟-廻船と日本海海運の時代-』を観覧し、新潟港の歴史的背景に関する情報および資料の収集を行った。
その後、同じく新潟港周辺に位置する金刀比羅(ことひら)神社の海洋利用関連の装飾を見学した。本調査を通して、新潟県沿岸部周辺における日本海沿岸の水面利用とレジリエンスについて広範な知見を得ることができた。
金刀毘羅神社(2024年8月24日 撮影:明星つきこ)
*1 出所:新潟県ウェブサイト
(https://www.pref.niigata.lg.jp/sec/kasenkanri/1195402294446.html)
最終アクセス2024年9月1日
*2 出所:新潟県ウェブサイト
(https://www.pref.niigata.lg.jp/sec/sogyosuishin/1277420495419.html)
最終アクセス2024年9月1日
*3 出所:NHK新潟NEWS WEB(https://www3.nhk.or.jp/lnews/niigata/20240827/1030030373.html)
最終アクセス2024年9月1日
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